現場監督が体験した36年(最終回)

あとがき: 夢は音と映像のものづくり: 建設の仕事は終わっても、私の「ものづくり」への興味は変らない。古代建築に対する興味、自然環境への興味も増している。夢は限りなく、地球への敬愛と人類の叡智の記録、「世界遺産ベスト30」と「日本の美」の撮影行などである。世界地図を自室の壁に貼って、活動は開始される。 古代の人々の建築の歴史やそれを取り巻く自然環境は切っても切れない関係にある。「自…

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現場監督が体験した36年(104話)

いよいよこのお話も明日が最終回となります。・・・・BIMツールの利用:設計図のフロントローディングにBIMツールの使用が今年度活発になってきた。今までS社開発の3次元CADを中心に使用してきたが、市販のBIMツールがここ1年ほど建設業界を賑わしていて、今後はこの活用が有利な受注や、設計の前倒しのコミュニケーションツールとして台頭してくるだろう。現実に入札物件で、3次元でのプレゼや以降の顧客説明に…

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現場監督が体験した36年(103話)

【設計のフロントローディング】最近他のゼネコンでも試行を始めたことを新聞で読んだ。世界的に見て、施工図というものが有るのか無いのか皆目分からないのだが、日本では、設計図から施工図を書くのである。設計図は建築基準法と顧客の方向を見ている。決して施工の方は見ていないのだ。施工性や精度などは分からないのだ。詳細の寸法も表示されていない。設計のコンセプト、見積できる図面なのだ。  工事には数十社の協力…

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現場監督が体験した36年(102話)

日報の査定押印:そうして、定時で終わる業者は5時ごろ事務所に日報を持ってあがってくるので、作業内容と出面と時間、常用か取極かなどの査定をして押印をする。常用、取極とは、何か?契約外の仕事が常用、契約作業が取極である。このあたりの駆け引きもあるわけで、日報押印にはそれなりの緊張感が有る。常用は、予算に見ていない仕事で、利益を逼迫させるのだ。これが月末の勘定支払いの元となる。残業の業者もいるわけで、…

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現場監督が体験した36年(101話)

事務所内調整会議: 作業の進捗状況や明日の作業の確認を事務所内で確認する打合せを午後の職長を交えた工事打合せの前に行なう。通常お昼直前に行なう事が多い。全体工程と現実を照らし合わせ工事の進捗を検証し問題点を抽出して事前に解決策を議論しておく必要が有るのだ。この時間は船で例えれば羅針盤のような働きであり、船の行方を確認する意味があり重要である。この打合せを元に全職長との午後の打合せで優先順位を決め…

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現場監督が体験した36年(100話)

【現場の一日】朝礼: 建築の作業現場の標準的な一日とはどのようなものだろうか。まず、7:30頃に現場へ出勤、朝礼は7:45頃始まる。ラジオ体操を行ない、各職の点呼で今日の作業員の出勤数を確認、そして、今日の主な作業を説明し、重要な安全事項の連絡をする。立ち入り禁止区域などの説明だ。この周知徹底が元請けに義務付られた「連絡・調整」業務である。全員で安全のシュプレヒコールを行い、各職に分かれて、危険…

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現場監督が体験した36年(099話)

環境(E):  環境問題。建設業は結構環境負荷が大きい業種である。まず、建物を建てるということは、自然の一部を破壊することだし、自然界の動植物の居場所を奪う行為である。また、建設そのものの行為は、様々な自然材料や工業製品を大量に使用し、運搬にはこれまた大量のエネルギーを消費し、かつCO2を沢山排出する。産業廃棄物も大量に出される。リサイクル等の努力を行なっているが、完全に循環しているわけではな…

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現場監督が体験した36年(098話)

(****続き)人のことは二の次である。ここで他人に危害を及ぼす芽が生まれるのだ。「設備」、「自分自身の不安全行動」、「自分が他人に与える危害」の3つに分けられる。要は犯罪と自殺行為に分けられる。犯罪行為は責任を追及する必要が有り、投げやりな言い方だが、自殺行為については、悲しいが、組織に類が及ばないように自衛すべきである。計画に違反した不安全な自殺行為の行動はなかなか守りきれない。 社会的に…

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現場監督が体験した36年(097話)

・・・ちょっと旅に出かけます・・・ 安全(S): 企業は「安全第一」と言う。現場の全従業員と第三者の安全を守ることは企業にとっては最優先課題である。ゼネコンの安全意識と、協力業者特に作業員の意識には残念ながら大きな差が有る。この差を如何につぶして接点を共有できるかが現場の腕である。 安全には2つ有ると思う。ゼネコンが提供する設備についての安全と、各作業員の行動である。ゼネコンが提供する安全に…

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現場監督が体験した36年(096話)

工程(D): 現場にとって、工程の呪縛ほどきついものは無い。工程が切迫してくると精神状態は尋常ではない。私は人の書いた工程表では働けなかった。自分で竣工までを工程表の紙の上でじっくりと検討する事がまず精神的に安心する最大の手法であった。 工法や、労働力などを調べながら、一歩一歩書いてゆくと何処に現場の山が来るか、どのくらいの仕事量になるか、事務所のデスクワークがどのくらいの量になるか手に取るよ…

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現場監督が体験した36年(095話)

(****続き) そう言えば、私が駆け出し工事長の時に、自社の見積書の内容で明らかに見積落ちがあって、見積担当者を徹底的に責め挙げたことが有った。なんだかんだ理由を言って逃げようとするが、この時、必死になってコストと戦う3Kの現場と本社との間の大きな壁の隔たりを感じた。見積落ちしていても、担当部署が何らの責任を取るわけでもないし、現場の利益目標が軽減されるわけではない。こんな時、会社を背負って立…

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現場監督が体験した36年(094話)

(****続き) 受注額が下がれば、企業の規模を縮小せざるを得なくなる。従業員の削減、一般管理費を圧縮、研究開発部門の縮小など。但しこれは、ますます企業の競争力を弱めてしまい、社会的な地位も奪われるのだ。常に上位を争わねばならないのである。適切な企業規模が一体どのくらいなのかは私には良くは分からないが、余り大きな変革、大手術をしないで運営できる規模とは一体どのようなものなのだろうか。 建設業の…

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現場監督が体験した36年(093話)

コスト(C): 企業にとって、適正利益を上げる事は、社会にとっても、株主、従業員に対しても重要な事である。建設会社の場合、大手の間では技術水準や得意分野で抜きんでることは少なく、それほどの実力差は無い。社会的な評価もそれ程差が無く、競争入札という熾烈な戦いの中で、最終的には提案力よりも、コスト力で勝負しなければならないのが実情である。ゼネコンは何も作っていないと言ったがその通りで、下請けの労働力…

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現場監督が体験した36年(092話)

内装工事―検査 設備工事を含めた内装工事の検査は、建築の機能と快適性という、建築物の本質に迫るものなのである。安全、快適、機能性の有る建物、これが顧客が求める建築の姿であろう。当然重要度のランクがあるわけで、まずは、安心した入れ物としての品質・・・漏水、音、振動・・・などに関する検査がまず重要で、次に、機能や美観上の検査が有る。 安全、快適、機能と言ったが、建物のグレードによって、余りに…

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現場監督が体験した36年(091話)

仮設―安全対策: 仮設で最も大切な事は、効率性と安全性である。特に安全については、些細な仮設を見ただけで、その現場の安全に対するポリシーが見抜かれてしまうのだ。その現場の責任者の安全意識が反映されるのだ。三現主義で良く現場を巡回して、現場の問題点を把握しているかどうかは、このような安全設備を見れば分かるのである。様々な工夫が見られるのか、そうでないのか、直ぐに見当が付くのである。 工事の進捗に…

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現場監督が体験した36年(090話)

ものづくりの感動から離れて: しかし今、本社の内勤業務では、ものづくりに直接携わることが出来ず、退屈な日々を過ごすようになった。年をとると、現場的体力は無いが、全ての業務が、バーチャルな紙とパソコンの3次元の世界の仕事になってしまった。 暑さ寒さも無いが、感動も無いのである。仕方が無いこととは言え、そろそろ年貢の納め時、卒業をさせてもらうことにした。 最近、社内の同じような年齢の人達からの、…

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現場監督が体験した36年(089話)

いつまでもものづくりの技術屋であり続けること: 会社には様々な役職や職務があるが、上職になってゆくと次第に直接の、「ものづくり」からは遠ざかって行く。私も54歳以降本社勤務となったときは、不本意で寂しい気持ちであった。 ものづくりは「現場」であり4次元の世界である。内勤の仕事は平面と時間の3次元である。現場は、建設と言う3次元に時間軸が加わり4次元となる。 誠心誠意向き合って、自分の創作意…

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現場監督が体験した36年(088話)

役職定年かあ!:会社から「役職定年」と言われて定義は良く分からず、説明を聞くつもりも無かったが、これからは下っ端役職を退き、主な仕事は後任に譲り、残り時間で、引継ぎをすることなのだろうが、給料が変わるわけでもない。通常は58歳でなるらしい。同時に再雇用の話が有ったが、この役職定年と再雇用がどうも私の頭の中ではマッチングしないのだ。再雇用なら、60歳まで役職でいて、再雇用で後任の育成をすればいいの…

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現場監督が体験した36年(087話)

母の死: 母が亡くなった。2008年3月のことだ。1月の実家での新年会では元気であったが突然の死であった。早朝、会社に出かける直前に実家から電話があった。車で駆けつけたら、母が布団の上に仰向けになって倒れていた。恐らくトイレか何かで夜、立ち上がって、そのまま意識を失って倒れたのだろう。母は1月1日生まれ、丁度90歳になったところであった。足腰か大分弱くなって、姉が頻繁に母を散歩に誘い運動させる…

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現場監督が体験した36年(086話)

施工管理の世界の面白さ:大胆でかつスケールの大きな機械を扱って大地と戦い、かと思えば細かい神経を使ってミリ単位を争い繊細なデザインや微妙に異なる色の違いを見抜いたり、大胆な作業と、繊細な美的感覚を要求される世界である。 これが、建築施工管理の世界である。これが面白いのだ。このような全人格的仕事に恐れおののく人は、この仕事から去ったほうが良いだろう。 我々団塊の時代には、仕事優先で…

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現場監督が体験した36年(085話)

(****続き)私も20代で本社の見積研修で9ヶ月を過ごした時にも、意中の人が居たが、やはり男の世界で生き生きと働く彼女の仕事ぶりに、宝石のようなキラリと光る何かを感じたから意識するようになったのだ。しかしそれを感じ取ったのは私だけではなかった、他の男もそれを感じ取って先を越されて結婚してしまったのだ。女性の心の宝石は大切にしたい。男は、どんな女性でも良い訳ではない。何か魅力を感じて惹かれるのだ…

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現場監督が体験した36年(084話)

女性感、結婚観:余り関係ない話かもしれないが、私にもこのような事があった。20代半ばの現場で、資材の手配など忙しく電話をすることが多かった。私は結構快活に電話する方で、電話の相手の女性も若く快活な応対をしてくれる。結構この電話がお互いに楽しく電話友達になっていてこの会社に電話するのは楽しみだった。女性の応対の仕方は100点満点だったと思う。相手の人格が見えてくるような気がしたのだ。 ところがあ…

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現場監督が体験した36年(083話)

(.****続き)さて技術の伝承の話に戻るが、技術指針を教えることは案外簡単である。社内の資料を棒読みすればよく、分からないところだけを教えればよい。 しかし、若手が欲しいのは、このような知識ではないような気がする。S社に入ってくる人は優秀であると思っている。東大出身も居れば早稲田出身もいる。院卒、大卒、中途採用の外国人もいれば高専卒もいる。兎に角雑種なのである。雑草の粘り強さがあるのだ。東大…

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現場監督が体験した36年(082話)

(・・・続き)伝家の宝刀を使う時はいつか必ず来るはずだ。技術を常に温存しなければならない。企業も然りである。採算が合わないからと、そのような関係者の首を切ったり部署を解体したりは危険である。伝統と最新技術の両刀が必須であり、「古きを温ね新しきを知る」である。 企業が「当社は創業何年の歴史がある」と言うのなら、相応に歴史的技術も温存すべきである。ただ長く続いていれば歴史になるわけではない。中身は…

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現場監督が体験した36年(081話)

新人などへの教育:社内の教育プログラムの中で、講師を行なうことも度々あったが、教え方一つとってもなかなか難しい。経験の幅というか、豊富な語彙や例え話などから説明できるのか、技術資料を直球でしか説明できないのでは、受講生の理解度は変る。 建築の知識を面白可笑しく、興味深く説明するときに、「なぜ・・こうしないといけないのか?なぜ・・このような工法が必要なのか・・例えばこう言うことです・・・」などと…

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現場監督が体験した36年(080話)

ようやく、80話に達しました。昨年の10月から連載してきましたこのお話もそろそろ終盤を迎えます。引き続き、お付き合いお願いします・・・・ 本社でのお仕事: 本社には、様々な分野の専門家が沢山いる。また、現業部隊では建築系の若者もいるが、何らかの病気療養とか、現場生活に相性が合わずに逃避している人など、現場経験半ばで本社の仕事についている人もいるが、将来を考えると気の毒である。自分がどのよ…

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現場監督が体験した36年(079話)

(****続き) ③ イントラネット:これは、生産現場にとって良かったことかは考え物である。情報を本社で一括集中管理・発信する、一般管理費の合理化の点では良いかもしれないが、受信側としては、自らがアクセスして、検索しなくてはならず、調べ出して印刷する作業に一定の時間が必要になる。かつての、文書での配布に比べると、ユーザー側にとっては不便な部分もあり、「指示を発信しているのだから全員くまなく見る…

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現場監督が体験した36年(078話)

デジタル&IT技術と仕事:仕事をサポートする様々な技術や道具が、電子機器を中心に進化しているが、その決定的効果は我々の業界ではあまり無いのだ。センセーショナルな発表や広告はあるが、大量の労働力を総動員して一品生産を行い、それを管理する商売では、IT機器は、主戦力とはならない。人と人が面と向かったコミュニケーションと三現主義しかないのである。 私も今までに様々なソフトとIT道具を利用してきた、分…

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現場監督が体験した36年(077話)

参考までに、パワーポイントの功罪についてのネット(余丁町散人(橋本尚幸氏)の記事を掲載させて戴く。 ・・・・・昨日の日経夕刊「あすへの話題」で総合地球環境学研究所長の日高敏隆氏が「パワーポイントの功罪」と題して書かれている。どうもプレゼンテーションが直接的すぎてよくないのではないかとのご趣旨だ。アメリカの伝統的なインテリの間にも「パワーポイントはちょっと……」という人もいる。散人はとても耳が痛…

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現場監督が体験した36年(076話)

(・・・・・続き)施工図や三次元CADで最先端を行っていた他事業部が最近では一番後退しているようにも思えるのだ。その時の事業部長の考え方で方針が猫の目のように代わり、右往左往しているように見える。竣工図まで3Dで作成すると息巻いていたのが今では3D自体消沈していて、あれは一体何だったのか?やはり只の流行だったのか?と思わざるを得ないのだ。 常に現場に軸足を置いたセンター活動でなければならず、5…

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